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マリみて・可南子ちゃんについて(3)可南子ちゃんと祥子さま

2004年NHK杯フィギュアスケート女子シングルフリー演技で、荒川静香選手の演技が終わって実況アナウンサーの一言が面白かった。「エレガントな凄みといいますか……」エレガントな凄み。祥子様のようです。

それはともかく、長らくほったらかしにしてしまった、可南子ちゃんのこと。
祐巳と可南子ちゃんの会話ですが、「涼風〜」では、可南子ちゃんは祐巳の話を全く聞いていないですよね。会話をしているつもりで、彼女はずっと会話になることを回避し続けているように感じます。それが、あの温室でのやりとりでも、その前の薔薇の館の時も、購買部での時もあるのです。可南子ちゃんが祐巳と初めて会話として成立しうる会話をしたのは、彼女が祐巳から逃げるようになってから…つまり、「レディ・GO!」以降のようです。

最初に可南子ちゃんが祥子様と正面から接したのは、「涼風さつさつ」での温室でした。それ以前では、可南子ちゃんは祥子様から逃げるようにして接することを避けていましたが、このときには祥子様が可南子ちゃんの前に立ち塞がって、逃がさなかった。可南子ちゃんは逃れられなかった。このときの二人のやりとりをよくよく吟味してみると、どうも違和感があるのです。

(4)一喝された可南子ちゃんの反論の声は、最後まで聞かれなかった。/祥子様が身体を通路の脇に寄せて人ひとり通れる空間をつくると、可南子ちゃんは走って温室を出て行った。
(P.138-148 Ch.5より)

可南子ちゃんは、購買部に押し寄せている生徒をかき分けて突き進み、迷ったら全部買っちゃうような(「涼風〜」)、あるいは、コントロールもお構いなしにコースを外しても追いつき修正し、スピードを緩めずに飛ばしまくるような(「レディ、GO!」)、攻撃するか、降参するか、無視するか(おそらく点を取らせて、次の攻撃ターンを待つ)しか、ガードの方法を持たない子です(「涼風〜」P.47の発言)。
(4)の場面では、彼女の性格や行動パターンを通りならば、あるいは祐巳に裏切られ逃げるだけなら、祥子を突き飛ばしても逃げ出す(攻撃的に)のではないかと思うのです。それが、動けなくなってしまった。
もう一つ面白いのは、祥子様の対応です。逃げ去ろうとする可南子ちゃんの前に立ち塞がり捕まえて「叱責」します。しかしこのときは、怒りにまかせ相手を攻撃するのではなく、むしろ真っ当なことを冷静にいい聞かせるような、諫めるように可南子ちゃんに諭しているようにも受け取れます。怒りよりも、じっくりと読んでいると、それだけではない悲しみのような何かがにじみ出しているようにも感じられてしまいます。
さらにその後、祥子はわざわざ身を寄せて、道を空け、逃げ道をつくり、そこから可南子ちゃんは出て行くことができました。そうでもしなければ、可南子ちゃんは一歩も動けない様子だったのかもしれません。もしかしたら、祥子様はこのとき、完全に追い込まれ身動きのとれなくなった可南子ちゃんを見て、「ここから出て行くこともできるわ」というような、全く別の方法を思わず示してしまったのかもしれない、そんなことを考えています。
可南子ちゃんはこのとき、「誰でもいいから、誰か助けて」という無言の叫びを、その表情に出してしまっていた可能性があると思っています。正当でない行動だとわかっていることを匂わせるかのように反撃もせず、降参しようにも許されるはずもなく、無視しようにも立ちふさがっていて、上級生であることもあってはじき飛ばすこともできない。すべてのカードが封じられてしまった。
このとき何が起こっていたのか、祐巳視点からは可南子ちゃんの表情はわかりません。祥子様の様子については「このように厳しい表情は未だかつて見たことがなく、また、怒りを抑えつけた声はどこまでも冷たかった」とありますが、これは祐巳の印象でしかない。
ただわかるのは、これ以降、特に「紅薔薇のつぼみの不在」以降、祥子様と可南子ちゃんの関係が深くなったというか、共鳴しているようにも感じられるのです。特に、父との関係について。まだ二人の口からは何も出てはいないのですが。

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コメント

はじめまして。何だか僭越ですがドキドキしながらトラックバックさせて頂きます。
「紅薔薇のつぼみの不在」ではめったに見られない突き放した感じが新鮮でしたが、そこに却って深いレベルの理解があったのかと思わせられますね。マリみては確かにさまざまな努力の上で理解を深めあう話だと思います。しかし同時に、志摩子と乃梨子、あるいは志摩子と佐藤聖が最初は互いのマイノリティ性を手がかりにしたように、同じ心理的布置を持つ者同士故の共感という話もあるのではないかと思います。
祥子は登場以来キレ芸が冴えていて怒ってばかりですが、同時に物凄く自分が良く見えている人としても描かれています。それが可南子への向き合い方にきれいに繋がっているのではないでしょうか。可南子の全てに見捨てられたような気持ちをある程度汲んでいたのかも知れません。
可南子の中庸を知らない姿勢というのは長年の葛藤に対する一つの対処法だったのがかもしれず、それが祥子の前では通用しなくなってしまったのではと思います。
…あれ、コメント欄は皆少し存じあげている方です(汗。取り急ぎご挨拶に伺いました。

投稿: くりくりまろん | 2004年11月 9日 (火) 05時21分

初めまして。
初トラックバックでございますよ。ありがとうございます。なかなかいろいろなところを見て回ることができずにいたので、非常にありがたいです。
……「紅薔薇のつぼみの不在」では、祥子さまと可南子ちゃんの会話が、何とはなしに発展してしまっていくあたり、何が起こっているのだろうと思うのです。…可南子ちゃんが祐巳と一緒にいるよりも冷静になっているような。
祥子さまが「自分」の姿を鏡で見るように、自分の「外見」を言葉で表現できるようになったのは、やはり蓉子さまの妹になり、祐巳という妹を得て、と言う過程が重要だと思うのです。その後であらわれた可南子ちゃんに対して、その成果が出ているような流れにもなっていると思います。
長くなってしまいそうですので、このあたりで。

投稿: 冬紫晴(管理者) | 2004年11月11日 (木) 01時51分

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