« 蔦子さんのカメラ・被写体:瞳子ちゃん(4)祐巳とのこと(3)瞳子ちゃんのレイニーブルー | トップページ | 感想:マリア様がみてる「イン ライブラリー」 »

蔦子さんのカメラ・被写体:瞳子ちゃん(5)Complex

 宮崎駿監督アニメーション映画「ハウルの動く城」を観てきました。宮崎駿監督作品の中では「魔女の宅急便」が一番のお気に入りでしたが、それを超えました。
 作品全体の完成度としては、これまでの作品を超えているように感じます。その理由の一つには、作画・映像技術の精緻化・拡大がありましょうが、それだけでなく、「老い」が良い方向に作用しているように感じます。作品の展開を急ぎすぎることがなく、飽きさせず疲れもしない、バランスのとれたものになっているのでしょう。手間を惜しまず丁寧な作りであり、その意味での安心感はあります。
 「呪い」の扱いが面白く、その点から「もののけ姫」との比較、さらには「マリみて」の佐藤聖、あるいは志摩子さんのエピソードとの比較が面白いでしょう。

 「マリみてDB」を見ていると、もう新刊「イン ライブラリー」を入手された方もおるようですね。私は未入手・未読です。その状態で、とりあえず瞳子ちゃんについての話について、書くべきことは書いておきたいと思います。mikkyさんのコメントのごとく、すべて憶測の域を出ないですが、とりあえず示すだけでもやっておくと、受け取るときの幅が広がってくれます。それがあり得ないことだとわかれば、瞳子ちゃんの人となりをさらに絞り込むこともできるというものです。「その可能性は棄却される」ことを示す方が、実は難しいですから、それを証明できればそれは強い証拠となるのです。
 かなりの長文になります。失礼いたします。

 瞳子ちゃんは時折、よく考えてみれば不思議なことを言ったり、不可解な態度を取ったりします。それは、何も祐巳に対してだけではないのです。順を追っていきましょう。

(1)「BGN」にて:瞳子ちゃんは、乃梨子ちゃんのことを祥子さま・令さまに話すとき、それほど親しい人というわけでなくても得意気になっていました。「私はこんなすばらしい人と知り合ったんだぞすごいでしょう」というだけではないとすれば、可能性としては、自分との関係はともかくその人は確かにすごいんだから、と、その人のすばらしさを紹介するだけでも、ちょっと嬉しいということもありえます。

(2)「ロザリオの滴」にて:ここで瞳子ちゃんは、乃梨子ちゃんに呼び捨てにされています。これはリリアンにおいては珍しいことではないでしょうか。このことは、瞳子ちゃんが乃梨子ちゃんにとって、単なるクラスメイト以上の位置を得ていることを示しているように感じます。
 もう一つ、このエピソードでは、ほんの1シーンにしか登場しませんが、そこでの言葉がちょっと不思議なことを含んでいます。

「〜私もつきあってあげるから、って誘っても逃げ回ってばかり。それじゃ解決しないんだって、白薔薇さまからも言ってやってください」Pp.26

 乃梨子ちゃんが言うように、「被害妄想に似た思い込み」(Pp.30)による発言だったとすると、ちょっと不可解な言葉があります。「それじゃ解決しないんだって、」というところです。その前の部分から引っ張るとさらに面白くなります。「〜逃げ回ってばかり。それじゃ解決しないんだって〜」むしろ、瞳子ちゃんは乃梨子ちゃんと志摩子さんを速くひっつけるように、二人の空気を引っかき回していきました。

(3)「レディ、GO!」にて:(2)を踏まえた上で、もう一つ似たような不思議なことを言う場面があります。

「よ、よかったですって!?」/「そんなこと、わからないじゃないですか。一見いいように見えたって、長い目でみれば結果がマイナスだったということだってあるんです。いいですか、祐巳さま。細川可南子が自発的にやる気を出したなら、私だって何も文句は言いません。でも、もし祐巳さまが、何か引き替えの条件を出して働きかけをした結果だとしたら‐」Pp.57

 これも、祐巳の言ったように(Pp.62)祐巳を心配しての発言、というだけではない部分を含んでいます。むしろ、可南子ちゃんのことを案じている面が感じられるということです。具体的にいえば、ここに引用した彼女の言葉の、ハイフンに続く言葉を考えたとき、「祐巳さまにとってマイナス」では据わりが悪く、むしろ「細川可南子にとってマイナス〜」と続けた方がしっくり来るのではないか、ということです。

(4)「子羊たちの休暇」にて:瞳子ちゃんを読む上で重要な場面の一つが、ここにあると考えています。

話が、噂話になったとき、瞳子ちゃんが突然席を立って言った。
(中略)
瞳子ちゃんだけ、少し遅れて歩き出す。(Pp.144-145)

 それじゃあ、細川可南子の事情をよく知らないのに、いらついたり騒いだりしているのは何なのだ…と、そんなことを聞きたくなりますが、たぶん、とこちゃんは「私は悪口を言っているつもりはないし、真剣なんですっ」と、顔を真っ赤にして反論するのだろうな、などと思うのですが。それはともかく。
 この場面からうかがえるのは、いわゆる「お嬢様たち」とは一線を画そうとしている(距離をおこうとしている)ことです。そのような場面になれている様子もありますが、それに対して抵抗する方法も心得ているように見受けられます。柏木が同じ作品の中で指摘したような、いわれのない嫉妬を受け続けてきた面があったため、という推測も可能です。柏木もそのような状況には辟易していましたが、それは瞳子ちゃんも実は同じなのではないかと思うのです。

(5)「特別でないただの一日」より:瞳子ちゃんは(ついには)演劇部で先輩とトラブルを起こし、部を飛び出してしまいました。この場面は、単に部活動のレベルだけではなく、瞳子ちゃんがリリアン女学園の中で抱いていた不満が、祐巳を始め、外進生の乃梨子ちゃんや可南子ちゃんと触れる中で、ガードがゆるんで吹き出すようになってしまったような気もするのです。

(6)「銀杏の中の桜」にて:(4)(5)を踏まえて、次の場面を角度を変えてみると、面白いことが見えてきます。

「少し、お静かにしていただけない?」/「どうして皆さん、そんな無責任なことをおっしゃれるのかしら。」Pp.83

 ここでわざとセリフを切ってみます。その上で、乃梨子ちゃんがクラスメイトから受けたいくつかの印象を重ねます。

(何か嫌な笑いだなぁ)Pp.81
「乃梨子さんは頭もよろしいし、どこか近寄りがたい雰囲気を持っていらっしゃるし〜」
しかし、さっきまでの興味と羨望とほんの少しの嫉妬が入り交じった視線が、いつの間にか同情と思いやりと優しさの眼差しに変わっているのはなぜだ。Pp.83

 嫌な笑いと、(意図せざるものであっても)皮肉に対し皮肉で答える乃梨子ちゃんのモノローグの直後に、瞳子ちゃんがその状況を強制終了させるような行動を起こすようにも受け取れるのです。
 おそらく、薔薇の館のメンバーになるということは、「仲間はずれ」にするという意味をも含んでいるということです。それは一方では超人に祭り上げる結果にも繋がるわけです。

 また、この可能性を棄てずにおけば、瞳子ちゃんが「BGN」Pp.179-180で泣き出したのは、「志摩子さんを乃梨子ちゃんにとられた」というより、「乃梨子ちゃんを志摩子さんにとられた」想いの方が強かったという可能性まで出てきます。

 とりあえず、以上でございます。申し訳ないほどに長いですね。
 これからは、祥子さまのレイニーブルーと、その前に祥子さまのびっくりチョコレートなどにも触れていきたいですね。あと、ユキユミと。あの姉弟、好きなんです。

|

« 蔦子さんのカメラ・被写体:瞳子ちゃん(4)祐巳とのこと(3)瞳子ちゃんのレイニーブルー | トップページ | 感想:マリア様がみてる「イン ライブラリー」 »

「蔦子さんのカメラ」」カテゴリの記事

アニメ・コミック」カテゴリの記事

キャラ別:瞳子ちゃん」カテゴリの記事

マリア様がみてる」カテゴリの記事

コメント

この子に感情移入すればするほど、傷付いていく自分を感じます。(まるで、『白き花びら』の聖さまや、『レイニー』の祐巳ちゃんみたく・・・)
私もまだ『インライブラリー』は未読なのですが、いろいろのサイトで感想を見る限り、瞳子ちゃんの初視点のせいや、今までの妹問題の引き延ばしの鬱憤が出てしまっている人が多い様ですが、ここまで作品を叩かれると純粋に楽しんでいたファンは、本当につらいです!(この悲劇も誰が悪いって訳ではありませんのに・・・ 私的にはアニメ化&集英社の露骨なやり方が悪いと思っていますが、アニメのおかげで『マリみて』の存在を知った私としては、正直言って有難かった訳でもあり、何だか複雑です。)
でも、今野先生はかなり意図的に書いていらっしゃると私は思いますので、きっとこの三角関係の解決法をちゃんと考えていると思います。 と言います私も実は解決法は考えつきましたので、今野先生はきっとこのネタを使ってくると思います。(もちろん、姉妹制度の廃止or「ダブルスール」の実施する訳ではありませんよ!!) ヒントはやはり『マリみて』内にあったりしますが、これらはやはり私の想像内にしか過ぎませんが、これを実現してしまうと、『マリみて』は終わってしまうのは確かですね!!

投稿: mikky | 2004年12月24日 (金) 19時42分

>mikkyさま
ごきげんよう。

 12/25に、「イン ライブラリー」は購入、読むことができました。それを踏まえた上でコメントいたします。
 この作品や、作中の瞳子ちゃんに対する反応などを読んだ上で、もう一度「ライブラリ」、特に「ジョアナ」をじっくりと読んでみると、面白いことも見えてくると思います。
 また、私は「祐巳−瞳子−可南子」にせよ、「祐巳−祥子−瞳子」にせよ、「チョコレートコート」にみられる「三角関係」と呼べるような「二股の」人間関係はないと感じています。三奈子さまの瞳子ちゃんに対するコメントのごとく。
 瞳子ちゃんに感情移入したときに「傷ついてしまう」のは、瞳子ちゃんの受ける傷によるものでもありましょう。

 それから、「マリみて」は、極端な話「桜組伝説」と同様、いつでも終わる作品であり、且つ、いつまでも終わらない作品です。様々なイベントに関してそのプロセスを隠して飛ばしてしまえば、読者の多くが「終わり」と感じている「祥子の卒業」にはたどり着いてしまいます。逆に、例えそれを描いたとしても、リリアン女学園高等学校がなくなるのではありませんし、そこに通う生徒たち、先生方などの生活がなくなるのでもないのです。それらすべてが「マリみて」に描かれうるのであれば、事実上いくらでもお話は書けてしまいます。
 現メインストーリーの区切りはあっても、それはある意味でひとつの区切り(卒業と似たような)でしかないのです。

投稿: 冬紫晴(管理者) | 2004年12月26日 (日) 02時21分

こんにちは。
TTのほうの掲示板へのコメントありがとうございます。
もちろん、こちらも欠かさず読んでますよ。
こちらは内容が濃いのでなかなかコメントできないのです。
(つまり、よ〜くと考えないとコメントがまとまらないという意味です)
マリみては基本的に学校のイベントごとに話が進んでいますので(絶対ではありません)、次はどう考えても「剣道の試合」です。となると由乃さんが先? それともふたり同時に決まる?
それともその前に事件が・・・
妄想してしまいました。
瞳子ちゃんは「レイニー」の時期の損な役回りで、多くの読者に誤解されているのかなぁ。
あの時は、事情を知っている以上、祥子さまに引っ付いている必要があったわけで、その上で祐巳の立場もちゃんと考慮していて、かなり「いい子だなぁ」と思ったのですが。
でも、よく思い出してみれば初読の時は(祐巳にシンクロして読んでいたので)「この子、なんでこんな邪魔ばかりするの!」思ったのも確かです。

マリみての終わり方ですが、私も祥子さまの卒業だと思います。ただし、エピローグでその1年後(祐巳の卒業)を描く可能性はあると思いますが。
マリみてが一区切りついた後、いわゆる「外伝」というのもいいでしょうね。
祐巳が卒業した二年後ぐらいに設定して、祐巳の孫が薔薇さまになっている。
設定を現代にあわせて修正(携帯電話とか)して、できれば一般生徒の姉妹の話を読んでみたいものです。
(しまった、またまた妄想してしまった)

それと、あげ足取りすみませんが「滴」が「雫」になってます。

投稿: ワトソン | 2004年12月26日 (日) 20時00分

>ワトソンさま
ぎゃっ!ご指摘感謝。早速直させていただきました。

本筋はほぼそのまま時間の経過通りに進んで行くことを考えると、まず直近には「剣道の試合」ですよね。その前に事件があるとするなら、可南子ちゃんか、瞳子ちゃんがらみのようにも思えます。…というのは、可南子ちゃんは何をしているかわかりませんが「忙しくしている」ようですし。瞳子ちゃんはもしかしたら、演劇部を退部した可能性もあるのです。よき緩衝材であった部長もおそらく文化祭で引退、となれば瞳子ちゃんはさらに居づらくなり、また、そこにいる価値を見いだせなくなるのではないかということです。演劇に関しても、一度じっくり腰を据えて考えなければならない時期にきているのかもしれない、と言うより、考えて欲しいなと思うのです。
その部長が2年生で、また妹がいなかったら…などと思うのですが、それは可能性が低いかと思います。

一般生徒の姉妹のお話はぜひ読んでみたいですね。今のところ、三奈子さま−真美さん以外は、ほとんど波風立たない姉妹をみていないので。

投稿: 冬紫晴(管理者) | 2004年12月27日 (月) 01時59分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/54433/46669728

この記事へのトラックバック一覧です: 蔦子さんのカメラ・被写体:瞳子ちゃん(5)Complex:

» 「是が非か オーディション」の由乃さんと乃梨子ちゃん [『マリア様がみてる』アレンジ日記]
  ごきげんよう 最近、良い天気が続いていて、気分はウキウキです。  今日は乃梨子ちゃんと由乃さんの登場です。 -是か非か オーディション 「ISBN:40... [続きを読む]

受信: 2005年4月 5日 (火) 11時47分

« 蔦子さんのカメラ・被写体:瞳子ちゃん(4)祐巳とのこと(3)瞳子ちゃんのレイニーブルー | トップページ | 感想:マリア様がみてる「イン ライブラリー」 »