« 三奈子さまの暴走(2)棄てられないための装い | トップページ | 休止中に書いたマリみて関連ログ »

蔦子さんのカメラ:隔絶した場所…薔薇の館

 マリみての話で、とかく「誰が誰の妹になるのか」という予想をし始めると、延々と主張がぶつかり合ってしまうようです。そうかと言って、先の話を全く予想もせずにいられるようなものでもありません。そこで、とりあえずさらに地固めのような議論を尽くしていくことにします。
 「インライブラリー」での「ジョアナ」で、瞳子ちゃん視点の話が出てきたために、彼女のことについてあるところまで考えられましたので、ちょっと見方を変えましょう。一つは「どんなスールがこれまで描かれたのか」という「スール百景」ですが、それは次に回して、mikkyさまのコメントを受けた形で「薔薇の館」がリリアン女学園高等部の生徒にとってどのような場所なのか、どのように機能しているのかについて考えてみます。

 それは、「黄薔薇まっしぐら」第4節、特にPp.71の聖さまの「私はリリアンで〜」のセリフに象徴されるでしょう。このセリフはリリアン女学園高等部についての言及ですが、それだけではないと言えます。

 「保健室登校」という言葉をご存じの方も多いでしょう。例えば「四人姉妹(若草物語前半)」のベスは、「学校に通うには引っ込み思案すぎ」と評されていますが、このような子にとって学校内にありながら、学校そのものとは切り離されたような場所として機能している保健室なら通える場合に、そこに来ることを出席として数える、というものです。保健室はそのような「ある場所にありながらそこから切り離され、属していない場所」の典型例でありましょう。
 そして、リリアン女学園高等部における「薔薇の館」も、保健室と同様に「学校内にありながら隔絶した場所」の一つといえるでしょう。それは、「生徒会本部室」であることや、その建物自体が校舎とは別の場所にあることなどによって、まず条件付けられているでしょう。さらに、いつしか「薔薇さま方」という、「手の届かないようなすばらしい人たち」「遠くから敬愛するもの」として山百合会幹部が見られるようになることが相乗効果となり、その場所とともに「薔薇さま方」は一般の生徒とは「切り離された」ようなグループとして機能しているでしょう。

 しかし、このことはネガティブな面を持ちます。「敬遠」という言葉が、「嫌がって遠ざける」という意味を持つとおり、「一般生徒」によって作られている学校生活にはとけ込むことのできないと目されたような学生を、体よく追い出す先としても機能していると見ることができるのです。それが例えば、「銀杏の中の桜」において乃梨子ちゃんが感じた「嫌な笑い」が混じっている状況です。これが切り離されているための「悪い面」つまり「追い出す先」ということになりましょう。
 付け加えるなら、瞳子ちゃんがそれに対して反発しているように見え、それは「特別〜」におけるクラスメイトと彼女の温度差、違和感と繋がってくると読むことができました。

 ところが、さらに詳しく見ると、そのように学校生活になじむのが難しい生徒を、学校に引き留める機能をも果たしていると言えるのです。それはこれまで、どのような生徒が「薔薇さま」として活躍したと描かれているかによって見えてくるのです。安全地帯、安心していられる場所としての良い面が現れるのです。

 筆頭は、やはり「白チビ」こと佐藤聖さまでしょう。祐巳が薔薇の館に出入りするときには確かに包容力や理解力があるように振る舞っていましたが、「白い花びら」「片手だけつないで」から「Answer」に見られるとおり、栞との別れがあるまでは生徒会の仕事もほとんどせず、学校にもなじむこともできず、孤立し、はぐれた状態にありました。先代の白薔薇さまはそれを見かねて、おそらくこのままでは学校に出ることもできなくなる危険性も感じ、「見た目で選んだ」と本人に告げて「薔薇の館」にその絆をつないだのでしょう。そしてそこには、彼女にうっとうしがられることを承知で見守ることになる、蓉子というまた別のかけがえのない友人となる者もいたわけです。

 蓉子様は適応力に優れますが、中学からの「外進生」であり、最初は異分子と見なされていたことが「いつしか年も」からうかがえます。ただし、彼女の場合はむしろ本人の「とがったガラスの破片も、巨大な怪獣も、愛嬌のあるタヌキも拾ってしまう」特性などから、そのような活動をするのが自然だったのでしょう。

 祥子さま。高校入学当初は蓉子様曰く「怪獣」のような孤独な、周囲を破壊しかねない深刻な雰囲気を抱えていたのですが、蓉子様が山百合会幹部に引きずり込んで、「お姉さま方」つまり聖さま、江利子さまと一緒によってたかっていじくり回したせいで、「お姉さま方の意地悪!」とまで言えるようになり、祐巳を妹にして、事件を乗り越えてきてその結果、可南子ちゃんに対して蓉子様か聖さまばりの「超人」のように振る舞えるまでになってます。大きくプラスの方へ、解き放たれるように変化していった者の一人でしょう。

 志摩子さんもそうですね。「ここからいなくなりたい(江利子さま曰く、『人間の消えた楽園にすみたい口』)」という違和感と、同時に人とのつながりを求めずにいられない状態にあって、それとほぼ同様の状態にあった聖さまとスール関係を結んだことにより、彼女は学校に留まらざるを得なくなったわけです。聖さまの卒業後には乃梨子ちゃんが現れ、聖さまとは全く別の絆となりました。さらに祐巳や由乃さんの影響によってかなり変化してきたため、一年生当時、聖さまの妹の頃に比べてずいぶん安心感があります。(たぶん、志摩子さんの最大の悩みは、あのコスプレオヤジにだんだん似てきていることなのではないかと…)

 乃梨子ちゃんは高校からの外進生、しかも事情が事情ですから、まず学校生活にとけ込むのは大変だったはずなのですが、瞳子に激しく世話を焼かれ、しかも志摩子さんと出会ってしまった。彼女にとってはそれがプラスに働き、尊敬を集めつつ学校の中にしっかりと組み込まれる結果をもたらしたでしょう。

 由乃さん。彼女は大きな難題を抱えていたため、薔薇の館で祐巳に会い、さらに手術をするまでは学校にうまくとけ込めていなかったことがうかがえます。それ故に、令さまべったりと言うだけでなく、祐巳にもぺったりとひっついていますが…持ち前のエネルギーによって、次第にそこから外へと出て行っているようでもあります。

 「一般生徒」であったところから抜擢されてしまった祐巳は、かなり特殊な位置にいると言えましょう。「パラさし」の頃にあったような、「クラスメイトたち」とのやや離れたような関係がどのようになったかの記述はないのですが、少なくともその「親しみやすさ」や本人の人の良さ、人なつこさは、「隔絶された場所」としての薔薇の館にかかる橋というか、パイプのようになっているのではないかと考えます。

 このことから考えると、可南子ちゃんや瞳子ちゃんが薔薇の館に出入りするようになった重要性もわかってくるのではないかと思うのです。隔絶された場所という側面を持ちつつ、深く学校と関わらざるを得ない「薔薇の館」「山百合会幹部」というのは、適当な距離をおきつつ全く関わりが無くなってしまうのでもない、絶妙な状態を作ることも可能でしょう。
 「薔薇の館」というのは、ある種「隔絶された場所」「開放されていない場所」であるからこそ、そこは「なじめないもの」にとっての一つの安全地帯、避難所となり、それでいて、ただ逃げ場としてだけでなく学校生活に関わらざるを得ない場所であるが故に、その安全地帯を本拠地として外に出て行くことも容易である、そんな場所ではないでしょうか。
 
 他にも「隔絶された場所」はいくつか登場しています。まず挙げられるのは「古い温室」。その他にはあまり登場しませんが「部室」、「図書室」、「職員室」などが挙げられましょう。逆説的なのが「ファーストデートトライアングル」での、「休日の学校」ですね。あれは「裏返っている」と言えるのではないかしら。聖さまの発言の通り、実はリリアンそのものも「隔絶された場所」として機能する一面ももちろんありましょう。

 そうそう、蔦子さんのカメラも同じような役割を果たしているでしょう。それを構えていさえすれば、カメラにとらえたものの中に取り込まれてしまうことはなく、切り離されていることは保証され、がんじがらめにならずにすむ。その代わり、誰とも同じ画面にはいることはできないというものでもあるのですが。蔦子さんにもそのうち転機が訪れて欲しいと思うのです。そのような意味で。セルフタイマーで、同じ画面に一緒に写ることのできる誰かがいるように。

|

« 三奈子さまの暴走(2)棄てられないための装い | トップページ | 休止中に書いたマリみて関連ログ »

「蔦子さんのカメラ」」カテゴリの記事

マリア様がみてる」カテゴリの記事

コメント

「マリみてDB」(実は「アル・キネンシス」という名の書き込みは全て私です)で「薔薇の館の一般開放化」(瞳子ちゃんと可南子ちゃんはその為の原動力)の議論を取り上げて見た結果、結局は「姉妹制度」はどうするか否か(つまりは祐巳ちゃんは妹を作るのかどうか=「妹問題」の解決には全くなっていない)になってしまう事になります。(しかも、間接的に初期の『マリみて』を知らぬ間に叩いていたりもします。)
 そうなると、「姉妹制度」に惹かれて『マリみて』にハマった人を結局は裏切る結果になり、「世の中とは矛盾だらけ」としみじみ感じています。 (私も初期は初期で好きですが、アニメの第一話の「薔薇の館」の雰囲気は結構恐かったイメージが今でも残っています) 
 こうなると、初期の神聖な雰囲気と(今の「リリアン」の現状のような)現実味の雰囲気とどうやって両立させられるかが、今後ポイントとなっていきそうですね。 (最後の方は支離滅裂な文章で申し訳ありません)

投稿: mikky | 2005年1月13日 (木) 03時47分

はじめまして。
トラックバック及びコメント、ありがとうございました。
こうして記事を拝見させていただきますと、私のような、ただただ『マリみて』好きで、自己補完のように二次創作を書いている身としては、もったいないというか畏れ多いです。
趣味に走って、あまりBLOGらしくない、SSサイトですので、トラックバックがつくことなど永遠にないと思っておりましたので(苦笑)。
――色々と深い考察、勉強になりました。

投稿: 広園鈴菜 | 2005年1月18日 (火) 03時57分

たびたび失礼いたします。
この記事についてトラックバックさせていただきましたので、ひと言ご報告にまいりました。

投稿: 広園鈴菜 | 2005年1月19日 (水) 16時18分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/54433/46669734

この記事へのトラックバック一覧です: 蔦子さんのカメラ:隔絶した場所…薔薇の館:

» 『マリみて』について [WHEN@]
1/18の日記にてお知らせしましたとおり、当サイトに初めてTBをつけていただきました。サイト説明にも掲げているとおり、うちは同人要素の強い二次創作SSサイトです... [続きを読む]

受信: 2005年1月19日 (水) 16時13分

» 「リリアン女学園」の薔薇の館 [『マリア様がみてる』アレンジ日記]
ごきげんよう、皆さま  「マリア様がみてる」ISBN:408614459X:image:smallを語る前に「JR福知山線 脱線事故」のニュースのリンクを貼ります。「[http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/jr_fukuchiyama_accident/:title]」  詳しい原因はまだ解明されていませんが、「一分半」の遅れの取り戻しのために、スピードを出し過ぎた原因もあるようです。  (私も「JR」で通勤しているので、決して他人事ではありません。)  新聞... [続きを読む]

受信: 2005年4月26日 (火) 13時12分

» 「薔薇の館の一般開放化」の夢 [『マリア様がみてる』アレンジ日記]
こきげんよう、皆さま方  依然と「JR福知山線脱線事故」の心配をしておりますが、今日の新聞によると国土交通省航空・鉄道事故調査委員会鉄道会長が「レールの大きな損傷は見当たらず、過去の事故に比べ枕木などの傷も少ない。原因の特定は難しいと認識している」と述べておられ、「高速化が生んだ魔のカーブ」と見出しがありますが、またしても余禄ですが「曲がり角には異界への入り口や、妖怪、魔物がひそんでいる。どんな魔物がその扉を開いたのか。残された者は一部始終をしっかり見定めねばならない。でないと亡くなった人々に申し... [続きを読む]

受信: 2005年4月28日 (木) 11時23分

« 三奈子さまの暴走(2)棄てられないための装い | トップページ | 休止中に書いたマリみて関連ログ »