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蔦子さんのカメラ:本当に怖い「成績の全体的かつ急激な低下」

ごきげんよう。
「神戸在住(7巻)」(講談社アフタヌーンコミックス)の解説があまりに短かったので、ちょっとだけ説明します。
「神戸在住」という作品は、その名の通り、東京から移って神戸に住んでいる大学生の女の子によって語られる物語です。神戸ですから、もう10年も経ってしまいましたが、兵庫県南部地震(震災)の話も登場します。京都・和歌山・奈良・大阪・神戸・姫路など(ウチナーグチも登場する)多様な方言や、ペンだけで描かれた絵など、特徴が多い作品です。
 7巻では、主人公の憧れの人が亡くなるという、フィクションですが、追悼のような物語を含んでいたこともあり、即座に手に入れたかったのですが、油断していて…気づいたからよかったのですが。
 そのときの、彼女の受けたダメージの描き方がすごいのです。

 そして、そこからいくつかのことを考えました。それがいつの間にか「マリみて」にも関わってきたのです。今回はそのお話。かつては自分でも書いていたことを思い出し、SS仕立てにしようかと思ったのですが、書き始めようとしてあまりのこっぱずかしさに挫折…
 漫画版の「マリみて」の出来の良さが気に入っております。そんな中で気にし始めたことがありました。「白き花びら」において、小説版では聖に「見ただけで鳥肌が立つほど」に嫌われ、悪者扱いされていた、彼女の高校2年当時の担任教師についてです。漫画版では背景に退き、表情もわからないような描き方になっていました。
 ここで一つ前置きしておきますが、小説にせよ、漫画版にせよ、バイアスが強くかかった描き方になっていることと、この文章では教師寄りのバイアスをかけているため、受け止め方の差は大きくなっています。ただ、少なくとも、聖さまの様子を、成績のことだけを気にしていたかどうかはわからない、ということがあるのです。

 小説には、こんな風にあります。

−今までだって生活態度は良くなかったし、クラスメイトとの協調性が皆無であったのは変わらないのに、学業がおろそかになると目の色を変えて指導しようという担任の態度に嫌悪感を持った。(「いばらの森」Pp.253)

 確かにこのように書くと、担任教師は学業成績だけを気にしているようです。
 ところが、これは別の見方が可能なのです。
 かつて、女子高校の非常勤講師をしていた人にちょっと聞いてみたことがあります。

 ある時期まである程度の(高い)成績を保っていた学生が、突然、全体的に、大幅に成績を落とした場合、どうするか。

 答えはだいたいこんなようなものでした。

「深く踏み込むわけにはいかないし、デリケートな問題ではあるが、何もしないでいるわけにはいかない」

 つまり、当人に何が起こったのかをできる限り把握しなければならないということです。
 全体的な成績の突然の低下は、明らかに、当人が危機に陥っていることを示しているのです。高校は義務教育ではないとはいえ、学生を親から託されている以上、これを放っておくわけにはいかないのです。

 生活態度が多少ルーズであるというくらいでは、踏み込んで注意するかどうかといえば、その必要なしと判断されても無理はないでしょう。クラスメイトとの協調性があるかどうかというのも、指導する必要があるかといえば、実は特にありません。本人に著しい変化がある場合や、運営の妨害になるようなら別なのですが、協調性がないだけであれば、危機に陥っていない限り、特に干渉する必要はないと判断されるでしょう。加えて、聖はあの先代白薔薇様の妹になっており、側には蓉子がおり、完全に孤立してしまっていたのではありません。生徒のことにはできる限り干渉しない、というのであれば、注意を払いつつ様子を見る、というのが、突然の成績低下が起こるまでの教師の判断だったのではないか、と推測するのです。
 ところが、案の定というか、聖の成績ががくんと落ちた。一時期少なくなっていた欠席ももしかしたら多くなった。加えて、明らかにやせていっていたり、肌のつやがなくなったり、髪の毛に力がなくなっていったりしていた場合、それこそ大変な状況を示しています。
 ここでようやく「神戸在住(7)」とのつながりが出てくるのですが…

 それが示す可能性は、一つは神経性無食欲症いわゆる「拒食症」です。もう一つはうつ病です。彼女が実際にどのような状態にあったかはともかく、なぜ「大変な状況」なのかといえば、これらがともにかなり高い致死率を持っている症状であるということです。「メルクマニュアル家庭版」を見ると、ここでは具体的な数字を挙げるのは控えますが、とても無視できるものではありません。
 しかも、これらは何の前触れもないこともあるのです。成績の急激な低下がわかっただけでもいい方なのです。聖さまの場合、教師陣も噂も聞きつけてはいるでしょうから、むしろ「失恋した」ということなどに関する言葉が出てくるかどうかを確かめていたのかもしれないわけです。試験後の呼び出しでは、親が栞のことを聞いているかどうかや、自分の娘の変化をつかんでいるかなどを確かめていたかもしれません。

 ただし、繰り返しますが、ここではあくまでも教師が「精神衛生面を気遣っていた可能性がある」というバイアスをかけた文章になっています。小説版の文章では、そのような様子がうかがえないのが残念といえば残念です。リリアンのような、ある程度以上の成績を取る、まじめな生徒たちが集まった(女子の)高校であれば、現在では気にせずにいられない話題だからです。
(男子の場合は、神経性無食欲症(摂食障害)についていえば、リスクが小さくなります。この症状に陥る人の95%が女性という統計があるためです。しかし、その他様々なことが起こりうるため、いずれにしても注意を払う必要があります)

 「マリみて」作中ではもうひとり、同様の状態に陥った子がいます。
 「レイニーブルー」〜「パラソルをさして」での祥子様です。
 彼女の場合はまわりがほとんど気づかないうちに急激に症状が重くなった様子がうかがえますから、先生たちも気をもんでいたと推測できます。(だから、蓉子様がきたときに協力した)

 まあその…いずれにしても、誰もが陥る可能性のある危機があるということ、それを知る術がいくつかあって、その中に「成績の全体的かつ急激な低下」も含まれているということですね。

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コメント

えらい遅コメントですみません。
「白き花びら」に出てきた無個性に描かれている教師からの視点、興味深いです。聖は教師も介入せざるを得ないくらいの、思春期危機と呼ばれる状態だったのですね。
このころのできごとをきっかけに聖は大きな転回をとげるわけで、不安や絶望を感じやすい時期だけれども同時に新たな生成・展開に向かう可能性もある、という思春期危機についての教科書的な説明を地でいった話とも取れます。マリみては人物相互の関係がどう変化するかだけでなくて、人格形成についての視点があると思われるところがすごいと思っています。
由乃にロザリオを返されたとき、ぶつぶつ言っていたという令もかなり危機的でした。事情を良く知っていたとはいえ、他家のお家騒動には首をつっこまないなどと澄ましているのは目にはきちんと留めているという余裕の表われだったのでしょうか(汗)。

投稿: くりくりまろん | 2005年4月19日 (火) 01時28分

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