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マリみて・可南子ちゃんと静さま・マッチの炎とマリア様の星

 ごきげんよう。
 「英國戀物語エマ」第2話の放映がありましたね。1話に比べて全く見劣りしない作画の質、すばらしいです。また、絵コンテが実に見事でした…時間的な切り返しがうまく、すれ違う二人を時間・場所をずらしながら対比し、それぞれが重なり合って、それぞれを隠しているかのように見える…そんな感じがしました。誰かと思ってエンドロールを見ると、岡村天斉さんでした。なるほど。話には聞いていましたが、こんなことができる方だったんですね。前回には書きませんでしたが、オープニングの出来もよいのです。画面内にる大勢の人が、ほとんど全部動いています。しかも、様々な階層の。花売りの女の子もいて。(原作をご存じの方はおわかりでしょうが、「ここが大事なんです」。)第2話でいえば、傘屋の背景の書き込みと、日傘の作り込みといったら!作画の方本当にありがとうございます。

 さて、「エマ」のお話はこのくらいにして、このブログの本題に行きましょう。書きたいこと、書かなければならないことは多く、しかも論文は書かなければならず、どうしようかという感じなのですが、とりあえず書いておきたいことのリストを、覚え書きもかねてここに記しておきます。

・今回の話題:「静かなる夜のまぼろし」と「マリア様の星(『妹オーディション』収載)
・瞳子ちゃんの話題:瞳子ちゃんの一人称について
・瞳子ちゃんの話題2:クラスメイトとの距離と「銀杏の中の桜」での謎
・瞳子ちゃんの話題3:瞳子ちゃんのダブルメッセージ・閉じた魂について

 ということで、今回は可南子ちゃんと静さまの話題です。

ここのところ、可南子ちゃんと静さまを重ねる話題を多く取り上げてきましたが、改めて「静かなる~」を読んでみると、二人はまるで違うのですよね。それでいて、どこか重なっている。「似て非なる」ではなく、「全く異なるように見えるにもかかわらず、何かが似ている」ということです。では、それはどのようなことなのでしょう。
 静さまの場合。こちらは、マッチに火を灯しつつ、そこに「見たい幻」が何であるか、彼女はしばらくの間わからなかったという書き方になっています。よって、こんな記述になります。

-欲しい物はそれじゃない。/そんな物では、心を温めることはできない。(「ライブラリ」Pp.25)
-自分が見たいと思っている幻は、少なくともそれじゃない。/では、何なら見たいというのか。何を求めているのだろうか。(同、Pp.31)

 そして、何度目かに、何度か空振りして現れた、「今一番求めている人の姿だったかもしれない」佐藤聖さまの幻影は、はっきりした物にはならず、ほろほろと崩れてしまうのでした。それを何度か繰り返し、その理由を「実際に行動したことがないから」「実際にその人に関わろうとしたことがなかったから」ということを悟り、彼女は事態を引っかき回してでも(彼女は結構いたずら好きですから、そのあたりはむしろ面白いとも思ったでしょう)行動に移ったわけです。それは、単に現実の聖さまの想い出を心に刻み、「聖さまのまっすぐな視線」「静のためだけに紡ぎ出された、偽りのない言葉」(Pp.44)を得るというだけでなく、ほろほろと崩れるしかなかった、はかない幻ではない、自分を支える物となりうるはっきりとした「何か」…幻でもかまわない、彼女を支える確固とした「思い出」を得るための努力でありました。いってみれば、「幻をはっきりした物にするための、具体的な努力」だったということでしょう。
 ちなみに、この「幻」は、別の言い方をすれば「想い出」であり、あるいは「記憶」と呼ばれる物でありましょう。それは、目の前にある現実の物ではなくても、それを持つ人を確かに支える物となりうるのです。

 しかし、「想い出」「記憶」は、そのような「支え」となる一方で、それにすがりついて離れられなくなる物、現実から目をそらさせてしまうものとなることもあります。その面が現れたのが、可南子ちゃんの場合といえるでしょう。
 かなり厳しい状態にあったと考えられる可南子ちゃんを支えていたのが、夕子先輩であったことは、想像に難くありません。そのため、夕子先輩の存在は可南子ちゃんの中であまりに大きくなってしまっていたでしょう。しかも、それが突然父親に「汚された」上に「奪われ」、しかも夕子先輩が、自分が恋い慕うもう一人である「父」を「奪った」ため、その混乱と状況から逃げるために、かつての夕子先輩の思い出を美化し、よすがとしていたということもまた考えられます。
 そこに現れたのが祐巳でありました。夕子先輩にどことなく似ている祐巳を、彼女はいきなり「はっきりとした幻」としてすがりつくことになったのでしょう。そして、それが幻であることにはっきりと気づくことなく、その「美化されたままであらねばならない幻」を守るために、祐巳を自分勝手にボディガードすることになった、といえましょう。
 それが、そのような幻ではない、現実にいる、一人の先輩であるということに気づくまでに、色々なプロセスを経たというわけです。祥子に諭されてからは「会ってはいけない」と思いこみ、逃げ出した先に祐巳がやってきた。そこで言われたのが、「双子の私が火星に行ってる」ということだったのでした。
 その言葉によって、可南子ちゃんは 「それが幻である」とはっきりと知ったのでしょう。たとえそれが現実のものでないと知っていたとしても、自分を支えるものがそれ以外見つからなかった以上、それにすがりついているしかなかったのです。ところが、それを祐巳は否定しなかった。それにすがっていてもいい、ただそれは、現実にいる私ではないということを、可南子ちゃんは受け取ってしまったのではないかしら。
 そして、「今目の前にいるのは、あなたが思い描いていた幻とは別の人間である」ということを少しずつ、リハビリのような過程を経ることで、可南子ちゃんは自分の中にある思い出と、祐巳と、さらには現実の夕子先輩とも分離させ、むしろ「明らかに幻であり、現実の物ではない」ということを知った上で、それにすがらなくてもよい、「一人で戦わなくてもいい」というように思えるようになった-そんな気がします。
 つまり、彼女は「幻を自分で美化し、それにすがり、現実から遠ざかっていたところから、それが幻であることを確かにすることで、想像をうまくコントロールし利用しながら、現実にしっかりと足をつけていられるようになった」ということが出来るでしょう。
 だから、「マリア様の星に憧れの人がいる」と思えることが、彼女にとっての確かな支えとなり、それは否定されることなく、また、それにすがりついたままでいることもなくなり、彼女を「一人での戦い」から解き放ち、とりあえず「お姉さま」はしばらく作らずに、具体的に何をしようかと考えている-その一つが、バスケットボールを再開すること-そんな様子があるのでは、と、そんなことを想像させるのです。

 現実に目の前にいる敬愛する誰かと、その人に対する憧れや慕う気持ち、そしてそれが作る幻とギャップ、それらとどうつきあっていくか…そんなことが、この二人が直面していたことなのかもしれません。その順序はそれぞれで異なりましたが、自分を支えるものを得ることが出来たこと、そしてそこから具体的に歩むことが出来ていること、それらが彼女らに共通しているのかな、と思うのです。

 そのような変化を経た可南子ちゃんです。静さまは具体的な行動を起こし、その結果彼女自身最初は思っても見ないような展開があり、祐巳を知ったり、志摩子と親しくなったりしたのです。可南子ちゃんの方にも、これからどのような交友関係の広がりがでるか、楽しみです。だから、瞳子ちゃんとの関わりについても、つい期待してしまうのです。
 また、小説本編に絵がれるか否かにかかわらず、呪縛から解放された(自分で縛っていたのですが)可南子ちゃんは、これまでよりもずっと活発に動き回るのでしょう。

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コメント

いつもお世話になっているたかむね様のブログのリンクを勝手ながら張らせてもらいます。

投稿: mikky | 2005年4月28日 (木) 12時32分

お邪魔します。静かなる夜のまぼろしは、蟹名静さまがかなり深く語られた作品であり、あの話だけで彼女が分かる集大成でした。インライブラリーでは、チョコレートコートと並ぶ傑作だと思っています。

投稿: たかむね | 2005年4月28日 (木) 23時02分

TBさせていただきました。
乃梨子×瞳子にスポットが当たった「妹オーディション」でしたが、今後、可南子が瞳子の行動に影響を与えるキーパーソンになってくれないかなどと、私もちょっと期待してしまいます。

投稿: ムラサキ | 2005年5月12日 (木) 23時11分

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