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マリみて・「薔薇のミルフィーユ」のこと:正面だあれ?

 ごきげんよう。早く書かねば、と思いつつ、やることが山積していたため、ずいぶんと遅れてしまいましたが、「薔薇のミルフィーユ」の解題です。本当は、夏コミに出る友人のサークルに、このサイトの記述をまとめたコピー本でもおいてもらおうかとか考えていたのですが、ちょっと無理でした。

 さて。後書きにあるように、「ミルフィーユ」に収載された3つのエピソードには、いくつかの共通するキーワードがあると言うことでした。それを頭の片隅に起きながら読んでいると、不思議なものが見つかりました。
 「正面にまわる」です。

 二人が正面で向かい合っているとき、それはどのような状況下にあるでしょうか。様々なことが考えられますが、ここではとりあえず、「ミルフィーユ」にも登場する主なものとして2つほど挙げておきましょう。

1)「対峙」
2)"serious"(まじめ、重大、厳粛、真剣など)

 どのように出てくるかは、以下の通りです。

黄薔薇
P.74 (谷中Jr. VS 由乃)少年は、~わざわざ由乃の正面に回って言った。/「由乃さん。僕、あなたには絶対負けませんからね」

他にも由乃と菜々はP.17~23,37~41,P.50~54などを見る限り、向かい合っているようなニュアンスが感じられます。実際には記述はありません。他にも、P.77での菜々の「令さまとお手合わせしたがっている~」という言葉は、明らかに令との対峙を望んでいることになります。

白薔薇
P.93 (乃梨子 VS 聖)聖さまは立ちあがって、乃梨子の隣から正面へと席を変えた。
P.98 (志摩子 VS 賢文(兄))園長先生が自分の部屋にいらっしゃいと誘ってくれたのを丁重に断り、台所のテーブルに二人向き合った。

他にも、P.80~82でも、志摩子&乃梨子は賢文と向かい合っていると考えられます。

紅薔薇
P.177 (祐巳 VS 柏木優)柏木さんは客人に対する礼儀とでもいうように、座る位置を一つ移動して祐巳の正面に座り直した。
P.180 何だい、と正面から真っ直ぐ問われ、祐巳はその瞬間に謎が解けた。

このエピソードに関しては、不思議な(面白い)文もあります。
P.167 柏木さんが、祥子さまを独占使用とする人だったら、正面から反発できるのに、と思った。もっとダメな人だったらよかったのに、と。
祐巳が、「ライバルである」はずの柏木に敵対できないと感じてしまっているのが、明らかになっている場面と言えましょう。これをふまえた上で、わざわざ柏木が真正面に座り直した意味を考えれば、その意味も大きくなってくるでしょう。

 これだけ並べてみると、黄薔薇のエピソードの明るさ、健康さ、朗らかさ、のほほんとした感じが明らかになってきます。真剣に向かい合っているにもかかわらず、そこには深刻さは感じられません。むしろ、未来に向かって開かれた印象を受けます。

 それに対して、白薔薇の兄妹(きょうだい)の対峙には、家族間の、特に父と兄との対立がうかがえます。同時にそれは志摩子にも影を落とし、彼女が「シスターになって家を出る」とまで思い詰めた原因の一つになっていることもうかがえます。(そのことから考えると、志摩子が「シスターになりたいのか」と兄に問われ「わかりません」と答えた意味に様々な味が加わります)

 祐巳と柏木の対峙の場面は、非常にシリアスです。祐巳が祥子の存在を遠くに感じてしまうほど(P.185参照)でした。
 そして、おそらく多くの読み手がとまどいを感じたのでしょう。柏木が突然「男」として浮かび上がってしまったためです。ただ、彼が突然男らしさを見せたというわけではないでしょう。むしろそれは、「涼風」における鉄拳制裁などに見受けられます。
 この場面の鍵は、P.183~184での祐巳の態度にあるでしょう。「ユキユミ萌え」としては、この場面で祐麒が部屋に入ってきたことによって起こっているようにも感じられ、そのことによって、場面をさかのぼってまで、柏木が男であるように感じさせているのではないか。柏木が「男」として突然浮かび上がってしまったように読めるのは、実は祐巳こそが彼の「生身(仮面の下)」に触れるような発言をしてしまい、そのことで祐巳自身が柏木を強く意識しすぎたのではないか、そしてそれを祐麒に見られてしまったと感じたことによるのではないか……
 そのように考えてもしまうのです。

 ここからまた、「きょうだいの話」という面が見えてくるのも、面白いですね。

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コメント

一仕事終えられたようで、お疲れ様でございます。…おや、ページデザインがシックな感じに。
久々にTBを打たせていただきました。

投稿: くりくりまろん | 2005年11月26日 (土) 04時33分

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…そして、祐巳が瞳子の役を聞き「ピョンコピョンコ」と飛び跳ねて喜ぶところは、瞳子にも何らかの感慨を与えたに相違ありません。瞳子に対する共感を示すという点では最上のものであった可能性もあります。演劇が題になっているシーンでこのような全身を用いた表現がされているのは、必ずしも偶然ではないのかも知れません。 ただこれらのことは他にも多々見受けられるところであって、特に瞳子において際立っているように見えるというにすぎません。 ・「立ち上がって、身を乗り出して、顔を真っ赤にして、テーブルを叩いて」いる令を由乃... [続きを読む]

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