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そのロザリオは誰のもの?

新刊発売まで残すところあと3日、いよいよって感じですね。
口内炎ができてしまって難儀してます。関係ないか。
某所で「『シャーリー』を見ていると乃梨子ちゃんがコスプレしているように見える」という発言を見て、変なスイッチが入って暴走しました。スミマセンm(_ _)m
しかし、「妹オーディション」の表紙を見れば、変なスイッチも入るというものですよね。ね?

さて。

 ロザリオを祐巳が首から外して瞳子ちゃんに差し出したときの、彼女の気持ちのうちのほんの少しだけでもわかることがないだろうか、と考えます。
 瞳子ちゃんは祐巳と祥子の関係を自分の気持ちより重視して行動しているのではないか、という気がします。「白地図」でたまたま福沢家を訪れてしまった瞳子ちゃんが、祥子もまだ訪問していないと聞かされたとたん、出て行こうとしたのはこのような理由からであり、彼女の抱いている思いを表す最も象徴的な場面なのかもしれません。
 「レイニーブルー」〜「パラさし」ののとき、実は既に何とかして祐巳と祥子が二人でいる時間を作ろうとしていたわけですが、それでも自分の存在と祥子の変調によって祐巳と祥子の関係が揺らいで破断しそうになったことから、祐巳と祥子の絆が繊細な……(少なくともその当時は)ある意味弱い、もろいものだと感じた瞳子ちゃんが必要以上に遠慮するようになった、というか、何とかしてその絆を強くするような行動をとりがちになったのではないか。そんなことを考えます。
 
 このような前提をとるのは、前のログで示したちょっと不思議な一言があるためです。

P.168 『私が不用意な言葉をお聞かせしてしまったことで、祐巳様に気の迷いを起こさせてしまったことは謝ります。とにかく、そのロザリオは受け取れません。戻してください』

 考えてみればこの場面での瞳子ちゃんの言葉は妙です。印象がちぐはぐなのです。
 これだけ取り出してみると、それほど強い断り方ではない……というか、謝っていますから、自分に非があった、というような意味を持っていますよね。しかし、まずどんな返事をしたかと言えば、

P.167 『ありがとうございます。祐巳さまは何てご親切なお方なのでしょう−−−何て、私が言うとでも?』

 挑発的、攻撃的で皮肉な強い言葉を吐きます。「不快」な表情とともに。
 ところで、作中「不快」は「ムカつく」の意味で遣われていることがあります。「レディ、GO!」P.24で瞳子ちゃんが「祐巳様、あんな人〜今だって、……ああ不快!」と言っているんですが、私だったら……いや、例えば祐麒とか、あるいは乃梨子ちゃんとかだったら「ムカつく!」と言うのではないでしょうか。
 ならば、というか、彼女は相当に「ムカついた」に違いないでしょう……様々な感情が一度に吹き出して、しかもそれをうまく処理できず、精神的にも身体的にも「むかつき=悪心(おしん)/嘔気」が彼女を襲ったのではないか、それをこらえるようになったために「あんな表情」になったのではないのかな、と想像しています。
 その次には、これもいくつか不思議な感じを受けるのですが、こんなことを言う。

P.168 『申し訳ありませんが、私はセーラのようないい子じゃないんです』

 相手を挑発していたはずなのに、今度は「申し訳ありません」と前置きして、あげく『いい子じゃない』と言ってしまう。自分を卑下するんですよね。この言い方はたぶん、「小公女」での「六ペンス銀貨」のエピソードにおいて、セーラが自分のプライドをしまい込んでまで、相手を傷つけないために、差し出された好意を受け取ったことに対して、自分はそうしない、祐巳が傷つくのはわかっていても私は好意を受け取れない、ということのように、今じっくり読んでみるとそんな感じがします。
 そして、気を惑わせる……誘惑?するようなことを言ってしまったことを謝罪し、「とにかくそのロザリオは受け取れません」と言った。それぞれの言葉での意味の振幅が大きいのです。挑発的な皮肉、自虐、そして謝罪となるわけで、これが本の一時の間に全部発言として出てきたことになります。これらがすべて、瞳子ちゃんの「むかつき」=混じり合い絡まった瞳子ちゃんの感情が、ほんの少しずつこぼれだした欠片の1つ1つなのではないでしょうか。
 
 また、今になって「そのロザリオは受け取れない」というところが妙に引っかかって聞こえるようになりました。屁理屈ですが、じゃあ、他のロザリオだったらいいのか、と。他の誰かの、という意味でなく、祐巳がいつも首にかけているロザリオでなければ……ということです。
 祐巳がいつも首からかけているロザリオは、少なくとも蓉子さまから祥子へ、祥子から祐巳へと受け継がれてきたもの、だったですよね。だからといって、必ず受け継がれていくというのでもなく、例えば黄薔薇さんちでは令ちゃんは新しいロザリオを買っているわけですよね。(今度は受け継がれそうですけど)(註)少なくともそれは、祥子と祐巳の間で「受け取って」「受け取れません」で一悶着して、互いに「もう駄目だ」と思いこんで外され……と、祥子と祐巳の関係にあって実に象徴的であったわけですよ。いわば、二人の絆が実体化した、結晶したようなものでしょう。瞳子ちゃんにとってそれはもしかしたら、「祥子と祐巳の絆」だった。それを「渡され、首にかけられる」というのは、瞳子ちゃんにとってどのような意味を持っていたのか。祥子の「お下がり」という感じ、とか、卒業する祥子の代わりになってほしいという意味を連想する、とか……そんなようなことを強く感じてしまったのではないか、等と考えてしまいます。
 瞳子ちゃんは祥子ではない。そのことを祐巳がわかっていないはずはないし、瞳子ちゃんが「祐巳がそう思っていること」に気づいていないはずもない。それでも、「そのロザリオ」は、祥子が祐巳に渡したものであり、二人にとってのかけがえのないものであり、瞳子ちゃんと祐巳との間には(今のところ)何もないもの……むしろ瞳子ちゃんにとっては「自分のものではあり得ないもの」……ではないかと。自分のものになり得ないものを渡されても、妹にはなれない……ということもあるのかな、とか思うのです。
 
 もうちょっと続きます。新刊が出るまでにできるのかな?
 新刊が出てしまってからでは意味が無いのよね……ふう。

註:2006/10/6のRSさまのご指摘により、訂正いたします。「ソレッラ」P.86で祐巳が「少なくとも、私のために用意してくれたものでないことは確かだけれど」と言っていること、また、無印で胸ポケットから取り出していることを考え、さらに「ソレッラ」同頁で祐巳も思っているとおりであることから、それは受け継がれてきたものではない、と考えられます。大変失礼いたしました

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コメント

新刊も出ているのに(まだ読んでません)今更のことで失礼します。祐巳のロザリオが蓉子、祥子と経てきたものかは祐巳も知らないそうですが(チャオソレッラ!p86)、祥子は祐巳に胸ポケットからロザリオを出してかけようとしましたし(無印p73)、実際の授受の時もポケットから取り出しています(同p247)。普段、祥子は蓉子から受け取ったロザリオを首にかけているように考えられますので、祐巳のロザリオは祥子が蓉子から受け取ったものではなく、祥子が志摩子に用意したものである可能性が高いように思われるのですが…。

投稿: RS | 2006年10月 6日 (金) 22時31分

ごきげんよう。ご指摘ありがとうございます。

うあちゃ〜〜〜
しまった。何も確認せず思いこみだけで書いてしまいました。大変失礼いたしました。ご指摘ありがとうございます。
誤りを含む部分に訂正線を入れさせていただきました。考察の内容に大幅な変更を来すものでなかったのが幸いです。

一方、長沢智による漫画版では(第1巻第1話ラストあたり)では、祥子は自分の首にかけていたロザリオを祐巳にかけようとしていますね。これが印象に残ってしまっていたのでしょうか……

小説では、「ソレッラ」P.86で祐巳が「少なくとも、私のために用意してくれたものでないことは確かだけれど」と言っていること、また、無印で胸ポケットから取り出していることを考え、さらに「ソレッラ」同頁で祐巳も思っているとおりであることからすれば、確かに志摩子さんのために用意したもの、と考えるのが自然ですね。
ただ、志摩子さんには断られるだろう、ということも祥子は予想していたとも思うのです。そう考えると、何となく寂しい予想もできますね……誰かのために用意したのではなく、ただ、妹を作らなければならないという義務感によって用意したものなのかもしれない(確率として低いですが)

今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: 十六夜博師 | 2006年10月 6日 (金) 23時44分

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