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げんしけん:斑目/咲の緊張関係

*本記事はすでに無くなってしまったブログに掲載されていたログを、再掲するものです。

今回は笹・荻の話ではなく、斑目/咲の話です。

この二人の関係はなかなか面白いと思っています。良い影響を知らぬうちに与え合っているような緊張関係にあるようにも思えるのです。また、咲さんがコーサカと別れないでずっと一緒にいるのも、実は斑目が関わっているのではないか、そんな気がします。


どういうことかというと……

 「げんしけん」単行本第6巻収載「フタリノセカイ」の感想として、「切ない」というのがありました。確かにそのようにも読めますし、片思いしている斑目のやるせなさみたいなものもひしひしと伝わってくるのですが、それだけではなく、二人の不思議な緊張関係が、この物語全体にある種の緊張感をもたらしていることや、その緊張感があるからこそ「現視研」が「現視研」であり、咲も、荻上さんも、あまつさえ恵子(笹原の妹で、渋谷に入り浸っているような高校生であった)さえも居着くことができる場所、空間になっていたのではないか、そんなことを考えるのです。
 言ってみればそれは、もし、「オタク」と「オタク以外」の境界があるとするならば、「現視研」のような空間にそれがある、境界でその2つの世界が接しているのではないか、ということです。

 斑目は自他共に認める「オタク」でありつつ、咲に片思いしてしまっています。この点で、彼はより広い観点から見た「晩生の青年」のような局面を表します。プライドが高いと指摘されていますが、それだけではなく、自分に好かれていることを知ったら今までの関係すら成り立たなくなるのではないか、ということを恐れているようでもあります。この面から見れば、実にありふれた「引っ込み思案の恋心の物語」となります。
 一方、咲の方はコーサカとつきあっていくうちに、一緒にゲームをやったりするようにもなる。現視研サークルでは、マネジャーとしての能力を発揮することもある。例えば現視研初の同人誌の発行が頓挫しようとしているとき、笹原の頑張りと荻上のやる気を持ってその現状を打開する引き金を引く。あるいは、コスプレをしてしまったことで、「服を着る」ことに関する別の楽しみがあることを知る。(付け加えれば、例えばビクトリア時代のファッションの流行は女王自身のファッションをまねることから来ていたりするなど、王侯貴族の「コスプレをする」のが始まりだったとも言える気がするですよ)

 現視研では、こんな風にしてある意味「文化の越境」が頻繁に起こるのではないかと思います。特にそれが目立つのが、自分で服を選んで買うという行動に出た斑目と、コーサカと一緒にゲームをやるようになった咲に、特に顕著に表れているように思います。
 この二人には、どう読んだらいいかわかりませんが、独特の緊張関係があります。相容れないと感じながら、特に斑目は咲さんに憧れていることもあって、影響を強く受けていく。スタンスは変わらないのだけれど、何かが変わっていく。相手の何かを受け入れていく。
 この、「聞き入れる姿勢」「受け入れる姿勢」が、現視研サークルの面白い特性なのでしょう。

 そしてそれは、荻上さんが定着することができた大きな要因の一つであり、それが笹原・荻上さんの話にまで繋がってくる、ということになります。
 (クッチーまでいるような)ある意味ではまとまりのない、別の意味では「既存の場所に違和感を感じる者」にとって居心地の良い場所になっている「境界」「潮目」として、機能しているのかもしれません。

 斑目と咲の関係は、繰り返しますが、中でも典型的でしょう。咲にとっては、コーサカとの関係はある種の諦めとともにあるのではないか、等と考えることもありますが、それを可能にしているのが斑目との関係でわかってくる事柄なのではないか……と、そう考えるのです。

 枠組みを超えること、越境することは難しい。それができやすい場所があるということでしょうか。
 荻上さんにとっても、これは幸せなことであったのだと思うのです。

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