マリみて・可南子ちゃんと静さま・マッチの炎とマリア様の星

 ごきげんよう。
 「英國戀物語エマ」第2話の放映がありましたね。1話に比べて全く見劣りしない作画の質、すばらしいです。また、絵コンテが実に見事でした…時間的な切り返しがうまく、すれ違う二人を時間・場所をずらしながら対比し、それぞれが重なり合って、それぞれを隠しているかのように見える…そんな感じがしました。誰かと思ってエンドロールを見ると、岡村天斉さんでした。なるほど。話には聞いていましたが、こんなことができる方だったんですね。前回には書きませんでしたが、オープニングの出来もよいのです。画面内にる大勢の人が、ほとんど全部動いています。しかも、様々な階層の。花売りの女の子もいて。(原作をご存じの方はおわかりでしょうが、「ここが大事なんです」。)第2話でいえば、傘屋の背景の書き込みと、日傘の作り込みといったら!作画の方本当にありがとうございます。

 さて、「エマ」のお話はこのくらいにして、このブログの本題に行きましょう。書きたいこと、書かなければならないことは多く、しかも論文は書かなければならず、どうしようかという感じなのですが、とりあえず書いておきたいことのリストを、覚え書きもかねてここに記しておきます。

・今回の話題:「静かなる夜のまぼろし」と「マリア様の星(『妹オーディション』収載)
・瞳子ちゃんの話題:瞳子ちゃんの一人称について
・瞳子ちゃんの話題2:クラスメイトとの距離と「銀杏の中の桜」での謎
・瞳子ちゃんの話題3:瞳子ちゃんのダブルメッセージ・閉じた魂について

 ということで、今回は可南子ちゃんと静さまの話題です。

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マリみて:可南子ちゃんの活躍;「妹オーディション」感想として

 ごきげんよう。オレンジが好きな気分なので、ものすごくオレンジなデザインになってしまいました。
 あまり時間がとれないので、これまでのような(超)長文ではありませんが、小出しにしていこうと思います。

 瞳子ちゃんは、案の定といいますか、さらに泥沼にはまっていってしまっているようです。それを心配している乃梨子ちゃん共々不憫ですね…

 それに対して、可南子ちゃんはフレッシュな気持ちでいるような描き方になっておりました。それがなにやら、彼女のこれからの活躍を期待させます。これまではただ、取り憑かれたように祐巳を護ろうとしたり、父や夕子先輩を、彼女自身よくわからないうちに拒絶しようとしていたりと、閉じた面が強かったのです。しかし、「オーディション」では、遅ればせながらバスケ部に入ってバスケットボールを再開するなど、追いつめられた状態ではなく、これからいろいろなことをやっていきたい、という意気込みのようなものが感じられるのです。

 可南子ちゃんは「これから自分の見つけた世界へ旅立つ」かのような展開になっており、それはどちらかといえば「ロサ・カニーナ」の静さまを彷彿とさせます。
 静さまはこれ以降しばらくの間、準主役級の登場人物として活躍しました。静さまの方は遠からず(3年生の卒業と同時に)リリアンを去ることを決めていたが、一方の可南子ちゃんの方はといえば、逆にこれからようやくリリアンに「入る」という状況にある、といえましょう。
 だから可南子ちゃんは、これからの活躍の方が、今までの役回りよりも多様になるはずだと思います。より彼女らしくなると予想できるからです。今まで遊撃的な登場人物には、蔦子さん、真美さん、三奈子さま、柏木、祐麒、卒業後の薔薇さま方、といった者がいましたが、1年生(祐巳の下の学年)にそのような人物がいなかったことを考えると、実は結構貴重です。乃梨子ちゃんはすでに薔薇の館の住人ですから…「山百合会幹部」の外であり、「リリアン女学園」の内にあり、それでいながら根っからのリリアンっ子ではない、面白い立場にあるといえましょう。

 そのように考えれば、「祐巳の妹にはならない」というよりも、「今のところ、姉を持つつもりはない」と言う方が、より彼女の気持ちに近いのでしょう。その気持ちの中に、祐巳も入っているだけのこと、ということですね。それも、祐巳がコメントしているような、「姉と呼べるのは夕子さんだけ」というよりも、「とりあえず今のところ、『お姉さま』の下にいる『妹』ではない立場で動きたい」というような、そんな気がするのですね。今の時点では、護られたり、支えられたりするよりも、自分で動いてみたい、そんなことを感じるのです。「妹は持つかもしれない」というのは、その現れかもしれません。
 ただ、まだ、「今のところ」と言うことであって、彼女はあと4ヶ月ほど1年生でいるわけで、その間に全く何も起こらないということもない、とも思うのです。それが何かは予測できませんが、いずれにしても、目が離せないものですね。

 ラストの方、瞳子ちゃんと可南子ちゃんが並んで剣道の試合を観戦していた場面も、非常に気になるところです。ただ、思うに、彼女らは待ち合わせて一緒に来たというわけではないのでは、と感じます。それぞれが、黄薔薇様も由乃様もいらっしゃる、ということを考え、単独で見に行って、会場で会ってしまい、そのまま何となく一緒に行動している、そんな感じがします。
 「オーディション」での瞳子ちゃんの様子や、可南子ちゃんのクラスの妙な雰囲気に対する力強いコメント(Pp.93末)と、それを裏付けるような行動を見るにつけ、瞳子ちゃんを守る一つの大きな砦になりそうな気がするのです。乃梨子ちゃんだけではなく…いや、乃梨子ちゃんより強力かもしれません。可南子ちゃんには「リリアンの中にしかない常識」はそう簡単には通用しない(乃梨子ちゃん以上に)、という強みがあるのではないかと思うのです。乃梨子ちゃんにもそれは十分にあるし、それ故にクラスの不穏な雰囲気を敏感に感じ取ったと考えられますが、可南子ちゃんの方がより大胆に動けるのではないか、などと思ってしまうのです。

 とりあえず、可南子ちゃんに注目して書いてみました。

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マリみて・可南子ちゃんのこと(5)問題解決には程遠く

可南子ちゃんのことについて、ちょっと一段落させたいんです。瞳子ちゃんのことを扱いたいので。だからといって可南子ちゃんの問題が解決したわけではありませんが。
ここでは特に、「特別でないただの一日」での話から、キャラクター自身の抱える問題というより、この物語そのものの構造などから、可南子ちゃんのことをどう見るのかということにつなげていきます。

・「とりかへばや」に関する祐巳の感想
 「特別でないただの一日」には、お話の構造として一つ面白いものがあります。それは、「とりかへばや」に対する祐巳の感想は、そのまま「特別〜」の感想として、「マリみて」読者の反響の中に現れたと言うことです。祐巳の「とりかへばや」に対する感想はこうです。

(1)「『とりかえばや』はテーマが重い。主人公に妊娠出産なんてことも起きるストーリーは、高校生がやる演劇にふさわしくない」(pp.23)
(2)親が新たな人生を歩み始めたからと言って、置き去りにされたり、世間に公表できないからって引き離されたりして、それで八方丸く収めたつもりになるなよな。‐と作者(不明)に言いたい。
子供の立場にたったら、たぶん「この時点でとりあえず手打ちにいたしましょう」とはいかない。物語はそこで終わったとしても、昨日と今日の延長線上に明日はあるから、エンドマークの前と後で、すっぱり分けてもらっては困るのだ。(pp.70)

 例えば「マリみてDB」の掲示板には、ものの見事にこの2つの意見が「特別〜」の感想として投書されておりました。可南子ちゃんのエピソードが「リリアン」あるいは「マリみて」にふさわしくない、というものと、「これでまとめないで欲しい」というもの。逆に、「これで問題が解決した」というものも多かったですね。そう、もちろん、「特別〜」では、主人公ではありませんが夕子先輩は可南子父に孕まされてますし、可南子ちゃんは父が新たな家庭を作り、母が新たな一歩を歩いている中で取り残されていました。また、終盤であたかも大団円を迎えたかのように描かれていました。つまり、カウンターになっていると見ることができるのです。

・「特別」における可南子ちゃんの課題‐それでも大切なことvs取り残された子
 「特別〜」で描かれた可南子ちゃんのことは、「とりかへばや」の扱いだけでなく、別のエピソードのカウンターになっている、と見ることもできます。それは、「子羊たちの休暇」における祐巳のこの感想に対するものです。

 祥子さまが好きだ。/けれど、お互いが好きなだけでは幸せになれない。/自分が好きな人の側にいるだけで、他の誰かが悲しい思いをすることもある。/一個の人間の周りには、たくさんの人間がいて、それが社会を作り出している。(中略)/でも、人を好きになることは大切なことだよ (pp.154)

 では、可南子ちゃんのことについてはどうでしょう。可南子ちゃんは、お互いに好き合った夕子先輩×可南子父の裏で、いわば「見捨てられた」と感じさせられた。実際そのような面もありましょう。それでも「人を好きになることは大切」であることを優先できるでしょうか。
 あるいは、「見捨てられた」という想いは、可南子ちゃんが「自分の置かれた環境を儚んで、かわいそうだって自分自身を哀れんだ(by瞳子ちゃん@レディ、GO!)」結果でしょうか。 

 ある出来事に対する感想や、それ以外の出来事などをカウンターとして当てるのは、「マリみて」ではよく見受けられます。それはほとんどの場合、全く別の巻、別のエピソードとして登場します。例えば、「赤いカード」の美冬と「涼風さつさつ」の可南子ちゃんです。「特別〜」では同じ一つの巻にカウンターが埋め込まれており、珍しいですね。

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マリみて・可南子ちゃんのこと(4)可南子ちゃんTT

前回コメントをいただいたくりくりまろんさまのブログくりくりまろんのマリみてを読む日々でも少し話題に上がった、ワトソンさまのマリみてTTに書いた、次子ちゃん誕生までの経緯の推測をここでも紹介しようと思います。

可南子中1(夕子中3)
すでに可南子ちゃんの両親は別居状態。この年、可南子父バスケ部臨時コーチに。毎週、可南子(&夕子)の学校に来ることになる
(よって、可南子ちゃんはバスケ部にいた可能性は濃厚)

可南子中2(夕子高1)
4月頃 夕子交通事故で負傷
5〜6月頃 夕子全治するも、バスケをやめざるを得なくなりリタイア
7〜9月頃 夕子、可南子父に電話、以後会うようになる
10〜12月頃 詳細不明。「夕子×可南子父」成立時期と思われる
この年、夕子高校退学?
可南子両親正式離婚、可南子父と夕子結婚?(この年でも可)

可南子中3(夕子高2)
1〜2月頃 夕子妊娠
2〜4月頃 妊娠発覚
可南子、両親の離婚およびそこにある事実を母から聞かされる(この間と推定される)
可南子両親正式離婚、可南子父と夕子結婚(この間と推定される)
9〜11月頃 次子誕生
この年に夕子高校を退学、可南子父帰郷し家業の農業を継ぐ

可南子高1
4月 可南子リリアン入学
10月 学園祭で3人再会

次子ちゃんの存在を可南子ちゃんが知っているには、結婚前の発覚の必要性が高い。しかもその場合、「勝手に祐巳のボディガードをしていた」という可南子ちゃんの行動に強い動機が生まれます。
ただ、乳児の発達(成長)には大きな個人差があるため、見た目だけで「1歳になるかならないか」というのは範囲が広く、少なくとも前後2〜3ヶ月の幅があります。可南子父の遺伝子を受け継いでいると、見た目よりずっと幼いかも・・つまり、その月齢にしては「でかい」ことも考えられます。

計画外の婚前妊娠の可能性は高く、やはり、夕子先輩と可南子父の「軽率」および、可南子父の「年長者としての頼りなさ」は、はずれではないでしょう。
さらに可南子ちゃんには過酷な仮定も可能です。それは、夕子先輩と可南子父の関係がすでに確定し、可南子父ー母離婚協議中、可南子父ー可南子母ー夕子先輩の三角関係がごちゃごちゃして決着が長引く間に、なし崩し的に妊娠、という可能性です。
この三角関係に一応の決着を見るまでの経緯はミッシングリンクになっています。
ここで、可南子ちゃんのセリフを詳しく見てみると。

「聞いたわよ。お母さんから正式に離婚するって言われて原因を聞いて、私信じられなくて」pp.165

気になるのは「正式に」および「原因を聞いて」という言葉です。
夕子先輩の妊娠はあくまで「正式に離婚」したきっかけとしてしか機能していない口ぶりで可南子母は話しているような気がします。それまでどのような理由で、父母どちらがぐずっていたのかはわかりませんが、長年ほぼ絶縁状態であったにもかかわらず離婚しないというのは、「ワケあり」の印象があります。
また、正式に離婚すると聞かされるまで、可南子父×夕子先輩という事実すら可南子ちゃんは知らなかったのではないか、と言うことです。両親離婚の原因を可南子ちゃんが訊ねたとき、可南子母が「お父さんが夕子先輩をはらませた」なんて伝えたとしたら、世界が崩壊しますよ。そりゃ。しかし、このセリフからはそのような状況の可能性も少なくないわけです。

いずれにしても可南子ちゃん過酷な環境でよく頑張ってきたよねえ。祐巳にしたことは悪いことだけど、祥子様に本気になって注意してもらえて良かった。

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マリみて・可南子ちゃんについて(3)可南子ちゃんと祥子さま

2004年NHK杯フィギュアスケート女子シングルフリー演技で、荒川静香選手の演技が終わって実況アナウンサーの一言が面白かった。「エレガントな凄みといいますか……」エレガントな凄み。祥子様のようです。

それはともかく、長らくほったらかしにしてしまった、可南子ちゃんのこと。
祐巳と可南子ちゃんの会話ですが、「涼風〜」では、可南子ちゃんは祐巳の話を全く聞いていないですよね。会話をしているつもりで、彼女はずっと会話になることを回避し続けているように感じます。それが、あの温室でのやりとりでも、その前の薔薇の館の時も、購買部での時もあるのです。可南子ちゃんが祐巳と初めて会話として成立しうる会話をしたのは、彼女が祐巳から逃げるようになってから…つまり、「レディ・GO!」以降のようです。

最初に可南子ちゃんが祥子様と正面から接したのは、「涼風さつさつ」での温室でした。それ以前では、可南子ちゃんは祥子様から逃げるようにして接することを避けていましたが、このときには祥子様が可南子ちゃんの前に立ち塞がって、逃がさなかった。可南子ちゃんは逃れられなかった。このときの二人のやりとりをよくよく吟味してみると、どうも違和感があるのです。

(4)一喝された可南子ちゃんの反論の声は、最後まで聞かれなかった。/祥子様が身体を通路の脇に寄せて人ひとり通れる空間をつくると、可南子ちゃんは走って温室を出て行った。
(P.138-148 Ch.5より)

可南子ちゃんは、購買部に押し寄せている生徒をかき分けて突き進み、迷ったら全部買っちゃうような(「涼風〜」)、あるいは、コントロールもお構いなしにコースを外しても追いつき修正し、スピードを緩めずに飛ばしまくるような(「レディ、GO!」)、攻撃するか、降参するか、無視するか(おそらく点を取らせて、次の攻撃ターンを待つ)しか、ガードの方法を持たない子です(「涼風〜」P.47の発言)。
(4)の場面では、彼女の性格や行動パターンを通りならば、あるいは祐巳に裏切られ逃げるだけなら、祥子を突き飛ばしても逃げ出す(攻撃的に)のではないかと思うのです。それが、動けなくなってしまった。
もう一つ面白いのは、祥子様の対応です。逃げ去ろうとする可南子ちゃんの前に立ち塞がり捕まえて「叱責」します。しかしこのときは、怒りにまかせ相手を攻撃するのではなく、むしろ真っ当なことを冷静にいい聞かせるような、諫めるように可南子ちゃんに諭しているようにも受け取れます。怒りよりも、じっくりと読んでいると、それだけではない悲しみのような何かがにじみ出しているようにも感じられてしまいます。
さらにその後、祥子はわざわざ身を寄せて、道を空け、逃げ道をつくり、そこから可南子ちゃんは出て行くことができました。そうでもしなければ、可南子ちゃんは一歩も動けない様子だったのかもしれません。もしかしたら、祥子様はこのとき、完全に追い込まれ身動きのとれなくなった可南子ちゃんを見て、「ここから出て行くこともできるわ」というような、全く別の方法を思わず示してしまったのかもしれない、そんなことを考えています。
可南子ちゃんはこのとき、「誰でもいいから、誰か助けて」という無言の叫びを、その表情に出してしまっていた可能性があると思っています。正当でない行動だとわかっていることを匂わせるかのように反撃もせず、降参しようにも許されるはずもなく、無視しようにも立ちふさがっていて、上級生であることもあってはじき飛ばすこともできない。すべてのカードが封じられてしまった。
このとき何が起こっていたのか、祐巳視点からは可南子ちゃんの表情はわかりません。祥子様の様子については「このように厳しい表情は未だかつて見たことがなく、また、怒りを抑えつけた声はどこまでも冷たかった」とありますが、これは祐巳の印象でしかない。
ただわかるのは、これ以降、特に「紅薔薇のつぼみの不在」以降、祥子様と可南子ちゃんの関係が深くなったというか、共鳴しているようにも感じられるのです。特に、父との関係について。まだ二人の口からは何も出てはいないのですが。

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マリみて・可南子ちゃんについて(2)彼女が抱えていた矛盾と罪悪感の可能性

可南子ちゃんが「涼風さつさつ」に置いて祐巳の背後霊になっていた動機として、彼女をずっと責め続けさいなんでいた、かなり強い罪悪感があった可能性について書こうと思います。ここのところ書く気がなかなか出なかったのですが、急いだ方がいいと思いまして。
ワトソンさんの「マリみてTT」(「マリみて」タイムテーブル作成をしているサイト)に書き込んでいるときにも考えていました。そこで出た話題が、「可南子ちゃんは、祐巳が『男の毒牙』にかかるのを未然に防ぐために、勝手にボディガードをせずにはいられなかった』というようなことです。ここには、矛盾した好意(愛着)と憎悪をともなう強迫的な動機があったように感じられます。それは、「涼風さつさつ」を読み直すと、例としてあげられる部分があります。

(1)「それとも行きたいんですか」
(2)「だって心配だったんですもの」祐巳:「心配だから、後をつけるの?心配だから、私のことも監視するの?」可南子:黙っている
(3)「そんなことは望んでいないんです」
(すべて「涼風〜」P.138-148温室にて)

このときの可南子ちゃんの思いを考えてみたいと思います。ただ、これの根拠は、お母さんのことを推測したときよりもその根拠は弱くなります。

事実:
(1)父がよりによって高校生(夕子先輩)を妊娠させた・その結果(?)夕子先輩は退学した
(2)「男なんかいらない」と言っていた、男嫌いだったはずの夕子先輩が、よりによって父の子を身ごもり、結婚までしてしまった

矛盾:
(1)男嫌いだったはずの夕子先輩が、よりによって父に「無理矢理妊娠させられた」→「男の大半は最低な生き物」
(2)男嫌いだったはずの夕子先輩が、よりによって父と「結婚した」。しかも、その子を産んでいる。父は母と正式な離婚までして、夕子先輩と結婚した→「男なんかを庇われるんですか、祐巳さまも」

循環と恐怖の発生:
「純真無垢な「夕子先輩」(およびそれに準じる祐巳)は、無防備である」
「無防備かつ無垢な先輩は、最低の生き物(男)といると、無理矢理妊娠させられる」
「その人自身がその男と結婚し(=好きになり愛し合い)、男を庇うようになる」
→大好きな父も、大好きな夕子先輩も、安全(安息)な場所も、すべて同時に失う恐怖
参照:記事にするべからず「実際はもう少し辛辣でしたが」

罪悪感の発生:
「父と離ればなれになった・母は父を嫌っている(*推測)」
→自分がしっかりしていなかったから、大好きなお父さんが出て行った(追い出された?)
「夕子先輩を父から守りきれず、妊娠・退学に追い込んだ」
→自分が父と一緒にいれば、こんなことにはならなかった/「計画性なんて言葉とはほど遠い場所にいるよう」な(「特別でない〜」P.121 l.7)うかつな先輩を引き留め、不甲斐ない父と一緒にさせないために、自分が先輩を止めなければならなかった
→気づかなかった・できなかった自分が一番悪い

強迫的動機の発生:
「私が護らなければ(近づくものをすべて撃退しなければ)祐巳さまは穢れる。今度こそ無垢なものを穢れさすようなことがあってはならない」

結果の行動:
心配からつけ回し、近づく者を威嚇する

こんなところでしょうか。しかし、可南子ちゃんは外進生としてリリアンに入ってしまうような子です。相当に理解力や洞察力があると見ていいのではないでしょうか。とすれば、この矛盾したことに、気づいていた可能性があります。そのため、温室の一件以来無視を決め込むことになったかもしれません。罪悪感や矛盾の苦しさがあったからこそ、祥子様に指摘されただけで、つけ回すのを止めることができた、とも言えます。
このときの祥子様の行動も非常に面白いことがあるのですが、それは記事を改めることにしましょう。

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可南子ちゃんについてfrom「マリア様がみてる 特別でないただの一日」(1)

可南子ちゃんの家族についてのお話は、深刻な話題、生々しい話題として議論も起こっている話ですが、私なりに推測したことを書いていくことにいたしましょう。
ずっと気になっているのが、彼女の家庭環境で、その中でも忘れられがちな、お母さんのこと。これを考えてみましょう。
可南子ちゃんのお母さんについて、本文にある推測を可能にさせる情報は少なく、しかも散らばっていて、短い。だから、なかなか気づけないことなのかもしれません。それをできるだけ拾うと、これだけになるでしょうか。
(1)可南子「来ないかもしれないけれど、一応母の分だけは取っておかないといけないから」(P.104, l7)
 参照:P.108~109の祐巳と祥子さまのやり取り「ええ、一応ね」
(2)可南子「一緒に暮らしていたときは、お母さんに朝から晩まで働かせて」
(3)可南子「お母さんが毎晩お酒に逃げるのも」
(4)可南子「私だってわかっていたわよ。お母さんが働いていたのは、仕事に生き甲斐があったからだってことくらい。育児のために仕事を辞めたくない、って希望をお父さんが叶えてあげた、ってことも。」
(5)可南子「お父さんが家を出ていったのも、お母さんが仕事のストレスをお父さんにぶつけたから。このまま一緒にいたら、互いに傷つけ合うだけだって考えたから、距離を置こうとしたのよね」
(6)可南子「お母さんには悪いけれど毎週会えるのがうれしかった」
(7)可南子「お母さんから正式に離婚するって言われて」
2~7はすべて、P.160~165の保健室での話。
(8)可南子はリリアン女学園に通っている
 状況証拠。

ここから次のことを推測します。
(a)(8)私立女子高の学費を払えるということは、お母さんは一人で働いてかなり稼いでいるはずです。成績優秀者の優待があるか、一人親に対する保護があるかどうかなどで変わってきますが、一緒に暮らしていた時期には家族を養うだけ稼いでいたことは間違いないでしょう。仕事が生き甲斐であるほど仕事が好きな上に、外に出て働く人としては優秀なのではないかしら。
(b)仕事が好きで優秀である一方、家族、家庭については、十分に顧みる、十分に運用できる人ではなかった可能性があります。(2)「朝から晩まで働かせて」を別の面から見れば、「一日中働いていて忙しく、家にいないことのほうが多い」となりましょう。これを(1)「来ないかもしれないけれど、一応~」という可南子ちゃんの言葉が裏付けるかと思います。
(c)これは、優秀で忙しい、外に出て働く人としては致し方ない面がありますが、お母さんは(b)に加えて、仕事のストレスを家庭に持ち込み、家族に当たってしまうようです。それは今でも変わらない様子で、可南子ちゃんが高校1年生現在お母さんと同居しているかどうかははっきりしませんが、それは(3)「毎晩お酒に逃げる」ことから推測できます。同居しているとなると、可南子ちゃんは(「毎晩」は誇張でしょうが)お酒に逃げ、くだを巻くお母さんに付き合っているのかもしれません。
(d)一緒に暮らしていたときのお母さんのお父さんへの態度は、家を守っている立場にあったお父さんが、彼の精神的耐力にもよりますが「出て行ったほうがいい」と判断するほど、ひどかったと推測できます。一方のお母さんのほうは、(6)お父さんが中学時代のバスケ部の特別コーチになり、お父さんに毎週会うことができるようになった可南子ちゃんが、「お母さんには悪いけれど(うれしかった)」と感じるということは、夫婦仲はお父さんが出て行く以前から冷え切っていたというか、お母さんのほうがお父さんを追い出した、嫌っていた可能性があります。
(e)しかし、「正式に離婚」するまでに時間があったのはなぜなのか、今のところわかりません。可南子ちゃんのことを考えたのか、世間体を気にしたのか、まるで情報がありません。しかし、世間体を気にするなら、あのような形での離婚&夫と教え子との結婚を許すのでしょうか?世間体を気にするなら、隠し通して、夕子先輩の妊娠が判明した時点で…ごにょごにょ。

しかし。そう推測すると、可南子ちゃんはかなりきつい状況で小学校~中学校時代をすごしたことになりますね…どうやって耐えられたのやら…もしかしたら、不登校だったという可能性もあるかと考えています。そして、状況を抜け出す、状況を忘れるために勉強に没頭し、(勉強に手がつかなくなるどころではなく)成績が上がっていったのかも。
家族のゴタゴタから受験勉強に逃げることもあるのです。
可南子ちゃんは中学時代はバスケ部にいて、そこで精一杯活動し、それこそ没頭し、夕子先輩に出会い、心酔していたという推測も、(6)から可能です。その後、スキャンダルから部にいられなくなり、お母さんと一緒にいるのも苦痛で、勉強に、さらにはリリアンに逃げたという可能性もあるわけです。
ここからの話はこの次に…

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